あらすじ
大友の一人息子・優斗が誘拐されたーー。
胸に銃弾を受け(AF5『凍る炎』)、長野県佐久市の実家で療養する大友鉄のもとを、春休みになった優斗は高速バスで訪れる。だがその道中、優斗はパーキングエリアで忽然と姿を消す。その直後におきた、優斗の乗っていたバスの不可解な大事故。息子と向き合い、事件の背後を探る、大友の新たな試練がはじまった。手に汗を握る、怒濤のノンストップサスペンス。シリーズ最高傑作の誕生です。
ISBN: 9784167903121ASIN: 4167903121
作品考察・見どころ
堂場瞬一が描く本シリーズの真骨頂は、刑事としての矜持と父親としての情愛が激突する葛藤のドラマにあります。本作では、心身に傷を負った大友鉄が最愛の息子を奪われるという極限の状況に追い込まれることで、その内面の揺らぎがかつてないほど濃密に描写されています。単なる犯人捜しのミステリーを超え、血縁の絆を試される一人の男の「再起」を描き出す文学的な重厚さは、シリーズ随一の完成度を誇ります。 疾走する高速バスと不気味な静寂が支配する事故現場。この対照的な情景が織りなすコントラストが、逃げ場のない緊迫感を加速させます。不条理な暴力に抗う大友が、論理を超えた父の表情で真実に肉薄する姿は、読者の魂を激しく揺さぶることでしょう。緻密に張り巡らされた心理的な罠の深淵へと引きずり込まれる快感は、まさに著者の円熟味を感じさせる筆致であり、ページを捲る手を止めさせない圧倒的な熱量に満ちています。




