あらすじ
「俺たちは、面白いから記事を書くわけじゃないですよ。伝える必要があるから記事にするんです」
大手全国紙の整理記者を辞め、実家の印刷所が発行する「地域紙」編集長になった戸倉大介。
部数1万部、編集部員3人、週3回発行、全4ページ。人口25万人の平和な地方都市に事件は少なく、行政発表や街ネタが中心の、刺激に乏しい紙面だ。
そんな中、SNSを駆使する若き市長が自宅前で何者かに襲撃された。これはテロか?
その事件が、戸倉の記者魂に火を付けた。
人手も拡散力も速報性もない。それでも、地元で起きたこの事件の真相を誰よりも深く、正確に報道してやる。
裏を取れないことは書かない。特定の人物の主張だけで記事にしない。引用だけのこたつ記事は載せない。
元新聞記者の著者が報道の矜持を問う長編小説
ISBN: 9784065401637ASIN: 4065401631
作品考察・見どころ
堂場瞬一氏が描く本作は、情報の速さばかりが重視される現代において「言葉の真実味」を問い直す、硬派な人間ドラマの傑作です。大手紙の元記者が四面だけの地域紙で再びペンを執る姿を通じ、著者はニュースが単なる消費物へと堕した現状に鋭い楔を打ち込みます。現場の息遣いが聞こえるような緻密な筆致は、元記者である著者だからこそ到達できた報道の聖域そのものです。 特筆すべきは、物理的制約を逆手に取った「書かない勇気」と「裏取りの矜持」が放つ、静かでありながら圧倒的な熱量です。SNSの狂乱に背を向け、泥臭く事実を積み上げる主人公の姿は、情報過多の時代を生きる我々に、真に知るべき価値とは何かを突きつけます。文字の力を信じ、真実を抱きしめようとする者の覚悟が、読者の魂を激しく揺さぶる一冊です。




