あらすじ
東京は壊れつつある。見慣れぬ街に変わりつつある――。 1945年。B29による空襲の翌朝、防空壕の中で女性の遺体が発見される。首には刃物による切り傷が。無数の遺体と目の前のたったひとつの遺体。 これは戦争ではない。個人に対する犯罪だ――。 捜査を進める京橋署刑事の高峰は署長から思わぬ言葉を聞かされる。「あれは、空襲の被害者だ」。殺人事件のもみ消し――そしてまた殺人が起きる。 高峰は、中学からの同級生で特高に籍をを置く海老沢とともに、終戦をまたいで「戦時下の殺人」の犯人を追い詰めていく。 警察小説の旗手が満を持して描く、壮大な警察大河シリーズ、ここに開幕。
ISBN: 9784065276532ASIN: 4065276535
作品考察・見どころ
戦争という狂気の中で個人の尊厳を問う本作は、無数の死に埋もれた一人の殺人を追う刑事の矜持を鮮烈に描いています。堂場瞬一の緻密な筆致は、法が形骸化する焦土の絶望を背景に、正義の定義を読者へ激しく突きつけます。 映像版が映し出す炎の圧倒的な臨場感に対し、原作は文字でしか辿り着けない魂の深い慟哭を刻んでいます。特高の旧友との歪な共闘から漂う緊迫感は、活字という媒体でこそ真の深みを増すのです。両者を味わうことで、時代の業に翻弄された男たちの生き様が立体的に浮かび上がるはずです。




