あらすじ
まだテレビ中継がなかった時代ーー。
オリンピックに命を懸けた、無頼の人気アナウンサー・和田信賢。
玉音放送を担当し、NHK「話の泉」の司会で国民的人気を博したアナウンサー・和田信賢。和田は戦後初めて日本が参加する夏季オリンピックに派遣されることが決まる。念願のオリンピック中継だが、無頼な生き方を貫いた和田は長年の無理がたたって体調を崩していた。
「どうしても、オリンピックを中継したい」
その一心で、男は、大会の舞台ヘルシンキへと向かう。現地から「日本人を鼓舞する」中継を続けるも次第に病は重篤になり、ついにーー。
戦争に敗れ自信を失った日本人に、夢と誇りを抱かせてくれたヘルシンキ五輪。
スポーツ小説の名手・堂場瞬一が、選手以上にその生きざまに惹きつけられたという主人公の魅力とは?
ISBN: 9784167919580ASIN: 4167919583
作品考察・見どころ
堂場瞬一が描くのは、声という実体のない武器で敗戦後の日本を鼓舞した表現者の壮絶な生です。和田信賢の無頼な生き様は単なる職人魂を超え、己の命を言葉に変えていく芸術家的な執念を感じさせます。戦後の焦燥の中、一人の男が「声」に何を託したのか。その魂の叫びが読者の胸を激しく揺さぶります。 白眉は、極限状態での実況シーンに宿る凄まじい臨場感です。肉体が崩壊しつつもヘルシンキの空に響く彼の声は、日本人の誇りを取り戻すための祈りに他なりません。言葉という不確かなものに命のすべてを賭ける美しくも残酷な純粋さ。スポーツ小説の枠を超えた「真のプロフェッショナル」の肖像を、ぜひその目で見届けてください。




