本作の真髄は、徹底的な主観と客観の乖離が生む、究極の「美しき誤解」にあります。主人公シドが抱く稚気溢れる「なりきり」という遊戯が、周囲の悲劇や陰謀と奇跡的なまでに合致していく構造は、単なるコメディの枠を超えた叙事詩的な快感をもたらします。著者の逢沢大介氏は、中二病という個人の衝動を、世界を揺るがす運命へと昇華させる物語構成の魔術師と言えるでしょう。
第七巻においても、その研ぎ澄まされた美学は健在です。圧倒的な力を持つ者が、その力に無自覚なまま歴史を書き換えていくカタルシス。それは、我々が心の奥底に秘めた「理想の自分でありたい」という根源的な渇望を、最も純粋で過激な形で肯定してくれます。緻密な伏線が重なり合い、勘違いが真実を凌駕していく瞬間の震えるような高揚感を、ぜひページを捲る手から直接受け取ってください。