あらすじ
浪人中の里英は、父と共に、伯父が所有していた枝内島を訪れた。
島内にリゾート施設を開業するため集まった9人の関係者たち。
島の視察を終えた翌朝、不動産会社の社員が殺され、そして、十の戒律が書かれた紙片が落ちていた。
“この島にいる間、殺人犯が誰か知ろうとしてはならない。守られなかった場合、島内の爆弾の起爆装置が作動し、全員の命が失われる”。
犯人が下す神罰を恐れながら、「十戒」に従う3日間が始まったーー。
『方舟』夕木春央の傑作が待望の文庫化!週刊文春ミステリーベスト10(「週刊文春」2022年12月8日号)、国内部門&MRC大賞2022など4冠、累計40万部突破、、、、世の読書子を唸らせた『方舟』の衝撃が再び……!
ISBN: 9784065404102ASIN: 406540410X
作品考察・見どころ
前作『方舟』でミステリ界を震撼させた夕木春央が、本作で描くのは「倫理の転換」という極限の心理戦です。犯人を特定してはならないという奇妙な戒律が、推理という知的な遊戯を、生存を賭けた残酷な選択へと変質させます。閉鎖空間で削り出される人間の本性、そして正義と生存が衝突する瞬間の火花こそが、本作の真骨頂といえます。 著者の緻密な論理構築は、単なる謎解きに留まらず、言葉の刃で読者の価値観を抉り出します。静謐な文体の中に潜む狂気と、ラストに待ち受ける圧倒的な虚脱感。知性と感情が激しくせめぎ合うこの物語は、ミステリという枠組みを借りて「人間とは何か」を問いかける鋭利な文学的挑戦状に他なりません。