あらすじ
大手企業「AZフーズ」で働く浅野健人に、知らない弁護士から電話が。「お父さんが出所しました」健人が10歳のとき、父親が母と妹を刺し殺して逮捕された。以来「殺人犯の子」として絶望的な日々を過ごしてきたのだ。もういないものと、必死で忘れてきたのに。父の動向を気にする健人だが、同じ頃AZフーズ社長・竹内に、社長個人の秘密を暴露する脅迫メールが届く。竹内から息子のように信頼される健人は解決役を任されるが……。
ISBN: 9784041108857ASIN: 4041108853
作品考察・見どころ
堂場瞬一が描く本作の真髄は、過去という底なし沼から必死に這い上がろうとする人間の、剥き出しの生にあります。「殺人犯の息子」という拭い去れぬ呪縛と、企業という組織の中での欺瞞が交錯する構成は、ミステリの枠を超えた峻烈な人間ドラマとして胸に迫ります。砂上の楼閣のように脆い平穏が、一通の電話で音を立てて崩れ去る様は、読者の心をも激しく揺さぶるでしょう。 著者は、被害者であり加害者家族でもある主人公の引き裂かれた精神状態を、冷徹なまでの筆致で描き出します。血縁という逃れられない運命と、社会的な成功という虚飾。その狭間で葛藤する健人の姿は、現代社会を生きる私たちが抱える孤独と共鳴します。一度ページを捲れば、重厚な心理描写とスリリングな展開が織りなす圧倒的な熱量に、最後まで翻弄されるはずです。




