あらすじ
「生きる」とは、こんなにもやりきれなくて、おかしいーー
累計354万部『火花』から10年後に書き上げた、新たなる代表作!
公認会計士として傍目には順調な生活を送っている岡田。
しかし、高校時代の仲間だった横井に500万円を貸したことから、その人生は狂い始める。横井は他の仲間たちからも借金を重ねたあげく、姿をくらましていた。
阪神タイガースのセ・リーグ優勝が決まった夜、岡田は大阪・道頓堀で偶然横井と再会する。
貸した金を取り戻そうとする岡田は、逆にさらなるドツボにはまっていく……
人間の「闇」と、「笑い」を両立させた奇跡的作品!
ISBN: 9784163920603ASIN: 4163920609
作品考察・見どころ
又吉直樹が『火花』から十年を経て到達した本作は、滑稽さと悲哀が表裏一体となった至高の人間讃歌です。理性的であるはずの会計士・岡田が、混沌を体現する友人・横井に翻弄され、自らの均衡を崩していく過程。そこには、正しさや合理性だけでは決して割り切ることのできない、人間の凄まじい「業」が色鮮やかに描き出されています。 歓喜に沸く道頓堀の喧騒と、その裏側で深まっていく絶望のコントラストは圧巻の一言。奪われ、堕ちていくほどに生の実感が研ぎ澄まされていく逆説的なカタルシスこそ、本作の真骨頂です。著者の卓越した筆致は、読者を奈落の底へと誘いながら、同時に救いのような「笑い」を提示します。これこそが、生きていることの残酷で愛おしい真実なのです。