堂場瞬一が描くのは、単なる謎解きではありません。それは人生という長い道でこびりついた「澱」を掬い上げる、冷徹かつ慈しみ深い眼差しです。旧友との再会という古典的なモチーフを軸に、成功の頂に立つ者と地べたを這う者が交わる瞬間に生じる、剥き出しの感情の摩擦が見事に昇華されています。
須賀大河という男の孤独な足跡に重なるのは、我々が抱く「拭い去れない過去」そのものです。些細な火種が取り返しのつかない悲劇へと変貌する過程は、運命の残酷さを鮮烈に突きつけます。都会の冷たい風を感じさせる乾いた抒情と、物語の奥底に流れる重厚な人間ドラマ。大人の魂を震わせる、至高のハードボイルドです。