上橋菜穂子
見えない流れに運ばれながら、それでも、私たちは光を求めて羽ばたく。 長い眠りから覚めた上橋菜穂子作品、ついに刊行!
上橋菜穂子氏の筆致は、常に一個人の生を超えた大きな理のうねりを描きます。本作においても、運命という不可視の潮流に翻弄される人々の姿が、圧倒的なリアリティを伴う生態学的描写と共に描き出されています。生命が持つ根源的な躍動と、それでもなお自らの意志で光を掴もうとする個の祈りが重なり合い、読者の魂を激しく揺さぶる一冊です。 特筆すべきは、言語化の限界に挑むような情景描写の美しさです。羽ばたく蝶の残像が象徴する生と死の境界や、異文化が衝突し混ざり合う瞬間の熱量は、上橋文学の真骨頂と言えるでしょう。単なるファンタジーの枠を超え、現代を生きる我々に生の本質を問いかける本作は、まさに魂の救済を綴った壮大な抒情詩なのです。
上橋 菜穂子 は、日本の児童文学作家、ファンタジー作家、SF作家、文化人類学者。日本児童文学者協会会員。日本文化人類学会 および日本文藝家協会 各会員。東京都生まれ。父は洋画家の上橋薫。