あらすじ
ISBN: 9784041067437ASIN: 404106743X
幼馴染みで作家となった今川が謎の死を遂げた。法律事務所所長の北見貴秋は、薬物による記憶障害に苦しみながら、真相を確かめようとする。一方、刑事の藤代は、親友の息子である北見の動向を探っていた──
堂場瞬一氏が描く本作の真髄は、記憶という不確かな鏡を通じ、過去の亡霊と対峙する男たちの魂の軋みにあります。単なるミステリーの枠を超え、記憶障害という危うい足場に立つ北見の視線は、読者を真実の深淵へと誘います。失われた断片を繋ぎ合わせる過程で浮き彫りになるのは、かつての友情が孕んでいた剥き出しの熱量です。 刑事と弁護士という立場の対比は、正義の多面性を鮮やかに描き出します。静謐ながらも力強い筆致で綴られる物語は、過去の罪と愛情が混ざり合う濁流となり、読む者の胸に消えない刺を残します。闇に沈んだ真実を掬い上げようとする執念が、この物語を比類なき人間ドラマへと昇華させているのです。