千早茜
親を亡くし一人になった20歳の夏、父よりも年上の写真家の男と出会ったーー。男の最後の写真集を前にあのひとときが蘇る。妙に人懐っこいくせに、時折みせるひやりとした目つき。臆病な私の心に踏み込んで揺さぶった。彼と出会う前の自分にはもう戻れない。唯一無二の関係を生々しく鮮烈に描いた恋愛小説。 解説・石内都
千早茜の筆致は、五感に訴える瑞々しさと鋭さを併せ持っています。本作の本質は、孤独な少女が他者という異物により決定的に作り変えられる瞬間の、残酷なまでの美しさです。写真家との日々は単なる情愛を超え、自己の殻を壊し、剥き出しの命を晒すための儀式のように響きます。 運命に翻弄される脆さと、一瞬に永遠を刻む執念が、読者の心を激しく揺さぶります。相手の冷徹な眼差しは、生への渇望を鏡のように映し出す。読後、あなたはもう以前の自分へは戻れない。唯一無二の、生々しく鮮烈な魂の変革を描いた傑作です。