あらすじ
大手総合商社テイゲンに、同社と旧ソ連の不適切な関係を指摘する文書が届いた。現会長の糸山が、30年前に旧ソ連のスパイ活動を行ったというものだった。警察に届けるわけにいかないテイゲンは、秘密裏に危機管理会社「TCR」に解決を依頼。元刑事の長須恭介が真相究明に動き出す。そして犯人から現金10億円を要求する第二の脅迫状が届けられた。長須は、正義とクライアントの利益に葛藤しながら、巨大企業の“闇”に挑む。
ISBN: 9784041067420ASIN: 4041067421
作品考察・見どころ
堂場瞬一が描く本作の真髄は、冷戦時代の亡霊が現代の巨大組織を揺さぶる圧倒的な緊張感にあります。単なる企業恐喝ミステリーの枠を超え、三十年という歳月を経て暴かれる組織の「業」と、歴史の暗部を抉り出す重厚な筆致は圧巻です。読み進めるほどに、洗練された商社の表層が剥がれ落ち、生々しい人間の野心と恐怖が浮き彫りになっていく過程には、ページを捲る手が止まらないほどの魔力があります。 最大の見所は、元刑事の長須が直面する「正義」と「実利」の相克です。真実を追う執念と、依頼人の利益を守らねばならない職業倫理。その狭間で葛藤する彼の内面は、組織という巨大な怪物に挑む個人の孤独と矜持を鮮烈に体現しています。過去の闇が現在を侵食していく凄まじい熱量に触れた時、あなたは社会の底流に潜む真実を目撃することになるでしょう。




