あらすじ
14年前、「リセット」を経験した人類は混乱の最中にあった。しかしラロロリン人の考えた「人間リサイクルシステム」がうまく機能し、やがて社会は再生を迎える。そして49歳になった空子は「クリーンな人」として、美しく優しい世界を生きている。「クリーン・タウン」の実家に戻り、同級生の白藤遙とその娘・波とともに。ようやく訪れた穏やかな社会の中心には、さらなる変貌を遂げたピョコルンがいた。都合の良い「道具」・ピョコルンを生み出した果てに人類が到った極地とは。村田沙耶香の全てが詰まった新たなる代表作。
ISBN: 9784087700015ASIN: 4087700011
作品考察・見どころ
村田沙耶香が描くのは、我々が信奉する自己という概念の解体です。主人公・空子のからっぽさは社会の欲望を映す鏡となり、人間とは何かという問いを突きつけます。個人の意志すら消費されるディストピアで、空虚さが自由か絶望か。その境界が崩壊する過程は、既存の倫理を揺さぶる凄絶な美しさを放っています。 物語の果て、著者は人間の定義を根底から変容させます。正常と異常を反転させる筆致は、日常の脆さを暴き出し、読者の輪郭すら溶かしてしまいます。深淵に呑み込まれるような戦慄と、常識が崩れ去る快感。現代文学の最前線が放つ、魂を揺さぶる究極の読書体験がここにあります。