あらすじ
ISBN: 9784087470598ASIN: 4087470598
彼女を守ってあげたい。誰にも渡したくないー。高校3年になる春、年上のいとこのかれんと同居することになった「僕」。彼女の秘密を知り、強く惹かれてゆくが…。切なくピュアなラブ・ストーリー。
村山由佳が描くこの物語の神髄は、単なる恋愛の枠を超えた五感に訴える抒情性にあります。コーヒーの香りや揺れる湯気、そして思春期特有のひりつくような心の渇きが、あまりにも鮮烈な筆致で綴られています。本作は単なる初恋の記録ではなく、大切な人を守りたいという切実な願いが、未熟な少年を大人へと変えていく魂の成長譚なのです。 いとこ同士という境界線上で揺れ動く二人。その絶妙な距離感が生み出す緊張感こそが、文学的な白眉と言えるでしょう。秘密を抱えたかれんの孤独と、彼女の痛みを分かち合おうとする「僕」の献身。日常の何気ない所作に宿る慈しみや、言葉にできないほど純粋な情愛が、読者の心の奥底を優しく、かつ激しく揺さぶります。一滴ずつ丁寧にドリップされるコーヒーのように、読めば読むほど深みを増す至高の一冊です。