村山由佳氏の叙情的な世界観を継ぐ本作は、触れれば壊れそうな心の機微を、丁寧に抽出された珈琲の雫のように描き出します。従姉弟という近くて遠い境界線で揺れる二人の心理描写は、甘やかな憧憬と身を切るような切なさが混ざり合い、読者の五感を激しく揺さぶる文学的な深みに満ちています。
特に今巻の鴨川の夜、静謐な緊張感の中で己の「覚悟」を問われる展開は圧巻です。他者との邂逅を鏡に、言葉にならない想いが溢れ出す瞬間の描写は、正にこの物語の真骨頂と言えるでしょう。青い情熱と人生の苦みが溶け合う、至高の人間ドラマをぜひその魂で受け止めてください。