あらすじ
村山由佳の猫エッセイ!
『猫がいなけりゃ息もできない』で愛猫〈もみじ〉を看取ってから1年。
平成最後の春におきた奇跡的な出会いのドラマと、50代からの幸せの形に胸がふるえる。
【内容】
父、愛猫に続いて、確執の深かった母を亡くした著者。その母の葬儀で、1匹の猫と出会う。小さなその猫が、止まっていた時間をふたたび動かし……。
「〈後悔〉と〈愛惜〉とは別のものだ」
「愛情は、限られた食糧ではない」
「冷静に考えれば、年を重ねてから楽になったことのほうがずっと多い」
「譲れないことも、許せないことも、人生に一つか二つあれば充分」
「どれほどしんどく思えても、生きてゆく途上で起こるたいていのことは、そうーーとりあえず、〈命とられるわけじゃない〉のだ」
など、経験からつむぎだされた優しい箴言も随所に光る。今がしんどい人、老いゆく心身に向き合う人、大切なものを失った人、親との関係に悩む人、そして猫を愛するすべての人に贈る1冊。
愛らしい猫たちや美しい軽井沢の写真を、カラー口絵と本文にたっぷり収録。
味わい深い著者直筆コメントも必見!
著者:村山由佳(むらやま・ゆか)
1964年東京都生まれ。立教大学卒業。 93年『天使の卵─エンジェルス・エッグ─』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2003年『星々の舟』で直木賞を受賞。09年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞を受賞。21年『風よ あらしよ』で吉川英治文学賞を受賞。『ミルク・アンド・ハニー』『猫がいなけりゃ息もできない』『もみじの言いぶん』『晴れときどき猫背 そして、もみじへ』など著書多数。
作品考察・見どころ
村山由佳の筆致は、喪失という深い闇に差し込む一筋の光を鮮やかに描き出します。本作は愛猫との日々を綴りつつ、親との相克や「老い」という現実を、峻厳かつ端正な言葉で受容していく魂の軌跡です。言葉のひとつひとつが傷ついた心に寄り添う体温を宿しており、直木賞作家としての卓越した心理描写が、読者の内面にある「癒えない痛み」を優しく解きほぐしていきます。 「命とられるわけじゃない」という言葉に込められた圧倒的な肯定感は、困難を生きる人々への救いです。愛情はすり減るものではなく、新たな出会いで何度でも再生するという真理。後悔を抱えつつ前を向く強さを、猫という無垢な存在を通して教えられます。自分を許し、再び何かを愛する勇気を与えてくれる、命の輝きに満ちた至高の一冊です。


