あらすじ
再会を果たした勝利とかれんはーー。
秀人とともに日本に一時帰国した勝利のもとに、かれんが現れる。
たがいに想いながら、ぎくしゃくしたやり取りしかできない二人。--私たち、もうダメなの?
試練と波乱の恋の結末は!?
累計545万部突破(発行時時点)のシリーズ、最新刊にして最終巻。堂々の完結!!
〜前巻までのあらすじ〜
高校3年生になろうという春休み。父親の九州転勤と叔母夫婦のロンドン転勤のために、勝利は、いとこのかれん・丈姉弟と共同生活することになった。
5歳年上の彼女をいつしか愛するようになった勝利は、かれんが花村家の養女で、勝利がアルバイトをしていた喫茶店『風見鶏』のマスターの実の妹だという事実を知る。かれんも次第に勝利に惹かれ、二人は恋人同士となった。
大学に進学した勝利は、叔母夫婦の帰国と父親の再婚・帰京を機に、アパートで一人暮らしを始める。一方、かれんは、高校の美術教師を辞め、鴨川の老人ホームで働きながら介護福祉士を目指すことになる。
マスターと由里子との間に生まれた新しい命を、勝利とかれんも心から祝福する。しかし、絶望的な事件は起こった。
うちひしがれた勝利は、逃げるようにオーストラリアへ。研究者の秀人のもと、あたたかい人たちに囲まれ、その心は次第に癒えてゆく。一方、日本でもそれぞれの時は進み、ある事故の知らせで勝利は急遽帰国したのだった……。
作品考察・見どころ
村山由佳が長年紡いできた本シリーズは、単なる恋愛小説の枠を超え、喪失からの再生と、祈りにも似た深い愛の形を描き切りました。最終巻となる本作では、傷を負い異国へ渡った勝利と、日本で待ち続けたかれんの、あまりに不器用で切実な対峙が胸を打ちます。言葉にできない微細な心の揺れを、コーヒーの香りのように繊細にすくい取る筆致は、まさに文学的白眉と言えるでしょう。 平凡な日常がいかに尊く、試練を乗り越えた先に待つ「ありふれた祈り」がいかに崇高か。読者は二人の軌跡を通じて、人を愛する痛みと、それを補って余りある救いを知ることになります。シリーズ完結に相応しい圧倒的な叙情性と、魂の震えるような結末は、すべての読者の心に静かな灯をともすはずです。


