村山由佳/結布
たがいの気持ちを確かめあった勝利とかれん。ふたりの物語のその後と、ふたりを取りまくキャラクターたちの物語を描く『おいしいコーヒーのいれ方』特別編登場!ふたりを見まもってきた丈と恋人・京子、かつて勝利に想いを寄せていた星野りつ子とようやく大学を卒業したネアンデルタール原田先輩、かれんへの想いがかなわなかった中沢、原田先輩の妹で勝利の教え子・若菜、オーストラリアの人気歌手・アレックス……それぞれがそれぞれの想いを胸に、新しい未来へと踏みだそうとする姿を描く、珠玉の「アナザーストーリー」!そして、思いがけない報せを受けた勝利とかれんは、オーストラリア・ウルルへ向かう。ウルルの空の下で、ふたりが見る未来とは?
村山由佳が描く繊細で湿度のある情景描写は、読者の五感を優しく揺さぶります。本作は単なる後日談に留まらず、愛を育む過程で生じた痛みや迷いを、登場人物たちが自らの手で慈しみ、昇華させていく再生の物語です。それぞれの視点から紡がれる「その後」の景色は、他者への献身と自己の成長が複雑に織り重なり、人生という長い旅路の深遠さを私たちに突きつけます。 舞台がオーストラリアの壮大な大地へと広がる終盤、物語は究極の純度へと到達します。かつての喪失感さえも未来への糧へと変えていく彼らの姿は、読者自身の掌にある温もりを再確認させてくれるでしょう。言葉の端々に宿る「信じること」の強さと、静謐ながらも情熱的な筆致。これこそが、長きにわたり愛されてきたシリーズを締めくくるに相応しい、魂を震わせる文学的な余韻なのです。
村山 由佳 は、日本の小説家。