あらすじ
大手芸能事務所「鳳プロ」のマネージャーながら雑用ばかりだった桐絵は、博多のライブハウスで歌う少女・ミチルに惚れこみ、上京させる。鳳プロでは専務の娘・真由のデビューが決まっており、ミチルには芽はないはずだったが、彼女の情熱と歌声は周囲を動かしてゆく。妨害、挫折、出生の秘密、スキャンダル……その果てに少女たちが見るものはーー。
ISBN: 9784344434493ASIN: 4344434498
作品考察・見どころ
村山由佳が放つ本作は、芸能界という虚飾の迷宮で、自らの魂を燃やし尽くそうとする者たちの執念を描いた傑作です。特筆すべきは、歌声という形のない才能を、五感を刺激する圧倒的な筆致で「見える」ものへと昇華させた描写力。泥濘を這いずりながらも一筋の光を掴もうとするミチルの姿は、単なるアイドルの枠を超え、読む者の生命の本能を激しく揺さぶります。 物語の本質は、才能という名の「呪い」と「救い」の相克にあります。マネージャー桐絵の献身、ライバル真由との宿命、そして暴かれる出生の秘密。それら全てを飲み込み、輝きに変えていくプロセスは、まさに命を削る芸術そのものです。虚構の世界で「真実」を叫ぶ少女たちの気高いまでの生き様は、閉塞感に満ちた現代を生きる私たちの心に、消えない火を灯してくれるでしょう。


