あらすじ
ISBN: 9784087468410ASIN: 4087468410
自分を責め続ける勝利が新天地で得るものとは。
心を閉ざしてしまった勝利は、単身オーストラリアへ。アボリジニの研究者・秀人さんをがむしゃらに手伝うが、過労で倒れてしまう。そんな勝利のもとに、かれんの弟・丈からの手紙が届く。
村山由佳が描く「喪失と再生」の極致がここにあります。主人公・勝利が抱える底知れぬ自責の念は、読者の胸を激しく締め付けますが、それこそが本作の持つ文学的な誠実さです。新天地オーストラリアの広大な自然とアボリジニの精神性は、傷ついた魂を癒やすための必然的な舞台装置であり、静謐な筆致が孤独の深淵を鮮やかに照らし出しています。 物語を動かすのは、遠く離れた地から届く「声」です。極限まで自分を追い込む勝利の閉ざされた心に、一通の手紙が届く瞬間のカタルシス。それは言葉が持つ救済の力と、断ち切れない絆の尊さを再確認させてくれます。人間がいかにして自らを許し、再び歩き出すかという普遍的な問いに、著者は情熱を持って答えを提示しています。