村山由佳が本作で挑んだのは、極限の美と残酷な歴史が火花を散らす、魂の救済劇です。世界的振付家・久我一臣が語る壮絶な戦争体験は、単なる過去の回想に留まらず、芸術という魔物に魅入られた者が払うべき代償と、それでも表現せずにはいられない人間の業を鮮烈に描き出しています。
点と点が結ばれ、世代を超えて響き合う「輪舞曲」のごとき重厚な構成は圧巻です。痛みを知る者だけが到達できる崇高な境地、そして絶望の淵で見出す一筋の光。緻密なリアリズムと剥き出しの情熱が融合した本作は、読者の魂を激しく震わせ、生への渇望を呼び覚ます文芸の真髄と言えるでしょう。