あらすじ
大手居酒屋チェーン『山背』に就職し、繁盛店の店長となって張り切っていたはずの健介が突然、自ら命を絶った。なぜ彼の辛さをわかってあげられなかったのかー恋人の千秋は悲しみにくれながらも、同じく息子の死の真相を知りたいと願う健介の両親と協力し、「労災」の認定を得るべく力を尽くす。だが『山背』側は、都合の悪い事実をことごとく隠し、証拠隠滅を図ろうとするのだった。千秋たちはついに、大企業を相手にとことん闘い抜くことを誓う。
ISBN: 9784344032682ASIN: 4344032683
作品考察・見どころ
村山由佳氏が描く本作は、理不尽な労働環境に命を奪われた青年の悲劇を起点に、残された者たちが巨大な権力に立ち向かう魂の連帯を描いた社会派文芸の傑作です。単なる告発小説に留まらず、愛する者を失った喪失感という深い闇の中で、真相という一筋の光を追い求める人間の尊厳と、その静かなる怒りが読者の胸を激しく揺さぶります。 著者の卓越した心理描写は、恋人や両親の葛藤を血の通った言葉として紡ぎ出し、社会の歪みの中でもがきながらも前を向こうとする彼らの足跡を鮮明に映し出します。絶望の果てに吹く風が、いかにして閉塞した現実を打ち破るのか。正義を問う厳しさと、人間への深い慈愛が共存する本作は、現代を生きるすべての人々に「本当の豊かさとは何か」を突きつける渾身の物語です。


