あらすじ
ISBN: 9784167924508ASIN: 4167924501
バンドマンの恋人が置いていった犬、仕事先で出合った捨て猫、幼少期から共に生きてきたカエルのぬいぐるみ…人以上に大切な、〈人ならざる〉愛しきものたち。彼らと「私」の間に紡がれる、美しく儚い物語とはー純粋で情熱的な愛のかたちを描いた、珠玉の6篇。著者デビュー30周年記念作、待望の文庫化。
デビュー三十周年という円熟期に放たれた本作は、単なる慈愛の物語ではありません。村山由佳が長年描き続けてきた「生と性の根源」が、人ならざる存在との交感を通して、より純粋かつ苛烈な形で昇華されています。言葉を持たない彼らとの関係性は、時に人間同士の愛よりも剥き出しで、孤独な魂の欠落を鮮やかに浮き彫りにします。 特筆すべきは、身体性を伴う圧倒的な心理描写の美しさです。動物の体温やぬいぐるみの手触りに託された切実な祈りは、読者の記憶の奥底にある「かつて愛したもの」を激しく揺さぶるでしょう。愛という名の救済と、その裏に潜む残酷なまでの献身。著者がたどり着いた無償の愛の境地が、冷徹なまでに美しい文体で綴られた至高の短編集です。