あらすじ
ISBN: 9784087475869ASIN: 4087475867
年上のいとこ、かれんとの秘密の恋を打ち明けた時から、何かが動きはじめた。単身赴任していた父も帰京し、再婚、そして妹も生まれ、勝利の周囲はにわかに賑やかに。恋の行方は?
村山由佳氏が描くこのシリーズの神髄は、五感を震わせる繊細な筆致と、青臭いほどに純粋な感情の揺らぎにあります。第五巻となる本作では、秘めてきた恋情が家族という現実の枠組みと衝突し、密室的な情愛から社会的な広がりを持つ人間ドラマへと深化を遂げています。日常に溶け込む「切なさ」の正体を、著者は比類なき解像度で描き出します。 父の帰還や新たな命の誕生という「家族の再生」が、禁断の恋をいっそう鮮烈に浮き彫りにする構成は見事です。祝福されるべき幸福と、分かち合えない秘密。その対比がもたらす緊張感こそが、読者の胸を締め付ける文学的な白眉と言えるでしょう。甘く苦いコーヒーのように、心の深淵に染みわたる極上の逸品です。