あらすじ
第23回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリ受賞作! ヒマラヤ山中で発掘された二百年前の人骨。大学院で遺伝学を学ぶ悠(はるか)がDNA鑑定にかけると、四年前に失踪した妹のDNAと一致した。不可解な鑑定結果から担当教授の石見崎に相談するも、その晩教授は何者かに殺害される。さらに研究室から古人骨が何者かに盗まれ......。衝撃の結末が待ち受ける!
ISBN: 9784299064042ASIN: 4299064046
作品考察・見どころ
二百年前の古人骨と、四年前に行方不明となった妹。この時間軸を無視した戦慄の一致から始まる本作は、遺伝人類学という硬質な科学の知見を杖に、人知を超えた深淵へと読者を誘います。DNAという一次元の情報が、いかにして悠久の時を繋ぎ止めるのか。著者は単なる謎解きを超え、生と死の境界を揺さぶる極めて文学的な命題を私たちに突きつけます。 緻密な理系的リアリティと、水の音を表現する擬音に象徴される抒情的な筆致の融合も見事です。巨大な陰謀劇でありながら、一人の青年が喪失と向き合う成長小説としての側面も併せ持ち、最後には魂を震わせる壮大な景観を見せてくれます。理知的な構成力と圧倒的な文章力が織りなす、まさに新時代のミステリーと呼ぶにふさわしい傑作です。