朝井リョウ
死んでしまいたいと思うとき、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない。(「健やかな論理」)尊敬する上司のSM動画が流出した。本当の痛みの在り処が写されているような気がした。(「そんなの痛いに決まってる」)生まれたときに引かされる籤は、どんな枝にも結べない。(「籤」)等鬱屈を抱え生きぬく人々の姿を活写した、心が疼く全六編。
本作で朝井リョウが鋭利なメスを入れるのは、整然とした論理では救いきれない生の残滓です。死にたい理由に明確な答えなどなく、ただ重力に抗えないまま呼吸を続ける。そんな、言葉にすれば零れ落ちてしまう人間の根源的な鬱屈が、読者の皮膚の裏側を逆なでするような筆致で、恐ろしいほど生々しく暴き出されています。 読者は、登場人物たちが抱える割り切れなさの中に、自分自身の最も醜く、かつ愛おしい欠落を見出すはずです。著者は、世の中の綺麗事という薄皮を情け容赦なく剥ぎ取り、剥き出しの痛みをただ提示します。読了後、心に刻まれるのは、安っぽい希望などではない。それでもなお、どうしても生きてしまうという圧倒的な執着が放つ、熱い体温なのです。
朝井 リョウ は、日本の小説家、ラジオパーソナリティ。2013年、『何者』で第148回直木三十五賞受賞。直木賞史上初の平成生まれの受賞者であり、男性受賞者としては最年少(23歳)である。
実写化・アニメ化された映画やドラマを観て、原作小説ならではの美しい心理描写や、映像化で新たに加えられた解釈・演出との違いを楽しみましょう。
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