本作で朝井リョウが鋭利なメスを入れるのは、整然とした論理では救いきれない生の残滓です。死にたい理由に明確な答えなどなく、ただ重力に抗えないまま呼吸を続ける。そんな、言葉にすれば零れ落ちてしまう人間の根源的な鬱屈が、読者の皮膚の裏側を逆なでするような筆致で、恐ろしいほど生々しく暴き出されています。
読者は、登場人物たちが抱える割り切れなさの中に、自分自身の最も醜く、かつ愛おしい欠落を見出すはずです。著者は、世の中の綺麗事という薄皮を情け容赦なく剥ぎ取り、剥き出しの痛みをただ提示します。読了後、心に刻まれるのは、安っぽい希望などではない。それでもなお、どうしても生きてしまうという圧倒的な執着が放つ、熱い体温なのです。