あらすじ
俺たちは踊れる。だからもっと美しい世界に立たせてくれ! 極道と梨園。生い立ちも才能も違う若き二人の役者が、芸の道に青春を捧げていく。芸術選奨文部科学大臣賞、中央公論文芸賞をW受賞、作家生活20周年の節目を飾る芸道小説の金字塔。1964年元旦、長崎は老舗料亭「花丸」--侠客たちの怒号と悲鳴が飛び交うなかで、この国の宝となる役者は生まれた。男の名は、立花喜久雄。任侠の一門に生まれながらも、この世ならざる美貌は人々を巻き込み、喜久雄の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。舞台は長崎から大阪、そしてオリンピック後の東京へ。日本の成長と歩を合わせるように、技をみがき、道を究めようともがく男たち。血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り。舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜け、数多の歓喜と絶望を享受しながら、その頂点に登りつめた先に、何が見えるのか? 朝日新聞連載時から大きな反響を呼んだ、著者渾身の大作。
ISBN: 9784022650085ASIN: 4022650087
作品考察・見どころ
吉田修一が到達した芸道小説の極致。血の匂いと白粉の香りが混ざり合う圧倒的な熱量に震えます。極道の家に生まれながら芸の深淵に挑む喜久雄の姿は、美しさが宿命を凌ぐ瞬間を鮮烈に描きます。著者の力強い筆致は、読者を一人の天才が国宝へ昇華する過酷なまでの美学へ誘い、魂を激しく揺さぶります。 戦後日本の熱気と、火花を散らす若き才能たちの連帯。本作の真髄は、芸に憑かれた者の孤独な闘争を、単なる成功譚ではなく「命の燃焼」として描いた点にあります。ページをめくるたびに舞台上の喝采が肌に伝わるような臨場感。至高の美を追う男たちの狂おしくも気高い生き様に、あなたは必ず陶酔するでしょう。