あらすじ
ISBN: 9784041125328ASIN: 4041125324
どんな小さな事件でも、続けて似たような事件が頻発すれば、その背後に歪んだ犯人の心が透けて見えて来るーー。東京の下町、門前仲町の商店街の裏路地で連続した植木鉢の損壊事件。所轄高橋署の新米刑事、麻生龍太郎は相棒の今津とともに捜査を開始するが、やがて傷つく人々の姿が浮かび上がる……。(「大根の花」)みずからも秘密を抱えた敏腕刑事・麻生龍太郎が哀しき事件を追う警察ミステリー。特別書き下ろし短編収録。
「大根の花」「赤い鉛筆」「割れる爪」「雪うさぎ」「大きい靴」「エピローグ」「特別書き下ろし 小綬鶏」
柴田よしきが描く本作の真髄は、日常の平穏な景色の中に潜む「心の歪み」を、透徹した感性で掬い取る圧倒的な筆致にあります。下町の商店街で起こる些細な事件の裏側に、現代人が抱える底知れぬ孤独や悲哀を鮮やかに描き出す手腕は、単なる警察小説の枠を超えた純文学的な香気すら漂わせています。 敏腕でありながら自らも深い孤独を抱える麻生龍太郎の眼差しは、罪を追うだけでなく、傷ついた魂に寄り添う祈りのようです。緻密な連作短編の形式をとることで、事件の連鎖がそのまま人間の業の深さを浮き彫りにし、読み終えた後には冷え切った心を温めるような、静謐で激しい感動が押し寄せる珠玉の名作です。