あらすじ
「この作品を読んでいる最中、何度も何度も泣いてしまった」(解説より) 作家 田辺青蛙
生まれた時から自己主張が苦手で、不満を口にすることができない由佳里。狭苦しく選択肢のない実家を出て、東京で大学を卒業し会社員となった由佳里は、そりの合わない上司の鈴本から理不尽なことで文句を言われ、罵倒される毎日を送っていた。「死ねばいいのに」現実逃避するのに昇ったビルの屋上で呪詛を吐いた翌日、由佳里は会社で鈴本が失踪したと聞く……(「自滅」より)。
女性たちの心の闇に迫る戦慄のホラー短編集。
ISBN: 9784041125311ASIN: 4041125316
作品考察・見どころ
柴田よしきが本作で描くのは、幽霊や怪異といった外的な恐怖ではなく、慎ましく生きる女性たちの内側に澱のように溜まった言葉なき情念です。自己主張を封じられ、日常の不条理に耐え忍ぶ女性が、限界を超えて呪いを溢れさせる瞬間の筆致は、あまりに生々しく、読む者の胸を締め付けます。本作の真髄は、加害者への復讐劇に留まらず、その刃が自分自身をも切り刻む「自滅」という結末の残酷さと美しさにあります。 社会の隙間で声を殺して生きる人々にとって、これは単なるホラーではなく、魂の慟哭そのものです。緻密な心理描写によって暴かれる心の闇は、ページをめくるごとに読者の倫理観を揺さぶり、自らの中にある毒を突きつけてきます。一度読めば、彼女たちが流す血の通った涙が、あなたの心にも消えない傷跡を残すことは間違いありません。