あらすじ
ISBN: 9784758443807ASIN: 4758443807
昨年の大地震が残した爪痕も、ようやく幾らか薄れてきたように思えた頃。
品川宿の宿屋「紅屋」では、おやすが見習いから、
台所付きの女中として正式に雇われることとなり、わずかばかりだが給金ももらえることになった。
「百足屋」のお嬢さま・お小夜が嫁ぎ、おあつから別れの手紙を受け取るなど、
寂しくもなるおやすだが、心配していた勘平の消息を聞き、
「むら咲」の女料理人・おみねから出された謎も考えながら、充実した日々を送っていく──。
時代小説版「赤毛のアン」、大好評シリーズ第三弾。
本作の真髄は、江戸の品川宿を舞台に、一人の少女が自らの人生を主体的に選び取っていく過程を鮮やかに描き出した点にあります。柴田よしき氏は、震災後の再生という重厚な背景を添えることで、単なる成長譚に止まらない命の瑞々しさを物語に注ぎ込みました。時代小説としての緻密な情緒と名作へのオマージュが織りなす人間賛歌は、読む者の魂を力強く鼓舞します。 特筆すべきは、料理を通じて解き明かされる人々の想いです。別れや寂しさを経験しながらも、若葉のように芽吹く主人公おやすのしなやかな強さは、読者の情緒を激しく揺さぶります。食卓から広がるささやかな幸せが、いかに人の心を救い、未来を照らすのか。その希望の灯火こそが、本作が放つ本質的な輝きに他なりません。