あらすじ
ISBN: 9784758446945ASIN: 4758446946
一人前の料理人となり、日々仕事へ精進するおやす。
紅屋ではとめ吉に料理を教えるために、代わって下働きをする女の子・おせいを新しく雇うこととなった。
そんな折、高輪にある東禅寺のイギリスの公使館が襲われた。
世情不安が大きくなる中、おやすの長屋を薩摩藩の川路正之進が訪ねてくる。
それは夫を亡くしたおあつさんからおやすへの呼び出しであった。
おやすは久方ぶりの再会に喜ぶが、もはや故郷に帰ることもできないおあつさんの立場に、胸がふさがれて……。
不安な幕末の世を精一杯生きる人々を描く大好評シリーズ第十一弾!
本作の魅力は、幕末という激動の時代を「食」という日常の視点から描く柴田よしきの卓越した構成力にあります。凄惨な事件が影を落とす中、おやすが供する料理は、荒んだ心を癒やす究極の救済として描かれます。料理人として次世代を導く立場となった彼女の葛藤は、ままならない現実を生き抜くための「しなやかな規律」を私たちに提示しています。 また、歴史の濁流に翻弄される人々の孤独と再生が、温かな湯気と共に綴られる点も秀逸です。帰る場所を失った人々の悲哀を包み込むのは、いつの世も変わらぬ誠実な手仕事の重みです。悩みながらも包丁を握り続けるおやすの姿は、困難な時代にこそ必要な、生への力強い肯定に満ち溢れています。