あらすじ
ISBN: 9784758443432ASIN: 4758443432
安政二年。江戸の大地震からふた月が過ぎ、品川宿の宿屋「紅屋」もようやく落ち着きを取り戻しつつある。
台所付きの女中見習い・おやすは、正式に女中となれる日を夢見つつ、充実した毎日を送っていた。
そんなある日、おやすはおつかいに行った団子屋で、武家の生まれらしきお嬢様・おあつと出会う。
おやすは、おあつが自分には想像もできない世界の人だ、という気がしていて──。
人として、女性として、女料理人として成長していく、時代小説版「赤毛のアン」、シリーズ第二弾。
本作の真髄は、不朽の名作の精神を江戸の土壌へ見事に着地させた、その圧倒的な構成力にあります。震災の傷跡が残る品川宿で、料理の力によって自らの道を切り拓く少女・おやす。彼女のひたむきな姿は、柴田よしき氏の繊細な筆致によって、失われゆく四季の彩りや五感を揺さぶる食卓の情景と共に、至高の人間ドラマへと昇華されています。 異なる境遇に生きる他者との出会いを経て、自分だけの居場所を再定義していく過程は、現代にも通じる普遍的な輝きを放っています。格差や運命に翻弄されながらも、台所から世界を慈しむおやすの瑞々しい感性。それは、読む者の心に勇気という名の温かな灯をともす、まさに希望の文学と呼ぶにふさわしい一冊です。