あらすじ
ISBN: 9784396335021ASIN: 4396335024
秋になったら、いつかあなたが話してくれた、京都の紅葉を見に連れて行ってー亡き妻が語ったその地は刑事になって初めての事件で、犯人に自殺された因縁の場所だった。刑事を辞めた男が十五年ぶりに訪れたとき、そこに手向けられていた貴船菊の花束。白く小さな花は、思いもよらぬ真相を男に告げる…。美しい京都を舞台に、胸に迫る七つの傑作ミステリー。
柴田よしきが描く本作は、京都の静謐な情景と人間の業が見事に溶け合った、魂を揺さぶる連作短編集です。刑事という職を辞し、喪失を抱えた男が対峙するのは、単なる謎解きではありません。それは、十五年の歳月を経てなお疼き続ける過去の傷跡であり、貴船菊の白さに託された静かなる告白です。抑制の効いた美しい文体が、読者を一気に古都の深い闇と光の境界へと引きずり込みます。 本作の真髄は、季節の移ろいの中に「赦し」と「再生」の予感を見出す文学性の高さにあります。犯人の死という重荷を背負い続ける主人公の孤独は、亡き妻への追慕と重なり、切なくも凛とした読後感をもたらします。花束一つが語る真実の重みに、あなたはミステリーの枠を超えた深遠な人間ドラマの神髄を目撃するはずです。