あらすじ
馬糞の辻で行われる競べ牛を見に行った幼き日の親鸞。怪牛に突き殺されそうになった彼は、浄寛と名乗る河原の聖に助けられる。それ以後、彼はツブテの弥七や法螺房弁才などの河原者たちの暮らしに惹かれていく。「わたしには『放埒の血』が流れているのか?」その畏れを秘めながら、少年は比叡山へ向かう。
人を殺す牛
鴨の河原で
放埒人の血
闇に生きる人びと
六波羅王子の館
十悪五逆の魂
幼年期との別れ
新しい旅立ち
暁闇の法会
黒面法師の影
誘う傀儡女
二上山の夕日
疑念雲のごとく
命あらんかぎり
六角堂への道
夢のなかの女
ISBN: 9784062770606ASIN: 4062770601
映画・ドラマ版との違い・考察
五木寛之が描く親鸞は、教科書に載るような静謐な聖人君子ではありません。本作の真髄は、高貴な血を引きながらも、底辺に生きる河原者たちの生々しいバイタリティに魂を揺さぶられる一人の青年の、血を吐くような自己葛藤にあります。清浄な仏道と、否定しがたい人間の「業」の狭間で足掻く親鸞の息遣いこそが、文学的な白眉と言えるでしょう。 映像化作品では平安末期の混沌とした情景が鮮烈に立ち上がりますが、原作の凄みは、文字によって「心の内の嵐」を執拗に刻んでいる点にあります。泥にまみれた牛の咆哮や川の匂いまでも想起させる五感を刺激する筆致が、映像の視覚的衝撃と重なり合うとき、読者はより深く「悪人」を抱擁する親鸞の思想の源流へと誘われるはずです。


















