あらすじ
偉大な師にして父親の親鸞に認めてもらおうと善鸞は東国行きを志願するが、父子の懸隔はかえって広がる。一方で最後の闘いの時も迫っていた。怪僧・覚蓮坊、謎の女借上・竜夫人、若き日に出会ったツブテの弥七、黒面法師らとの、永く深い因業が解き明かされる。そして、九十歳で入滅ーー。渾身の三部作、完結。
雪の日の対話
妙禅房からの誘い
父と子の対話
送りツブテの日
期待と失望
星をかぞえて
影の世界
涼の立場
東国からの噂
網を引くとき
ツブテの遺言
針木馬の館
回想の人びと
せまりくる足音
竜涎香の香り
夢まぼろしのごとく
群集と争乱
心なえる日々
大火に追われて
季節のうつろい
夜中に現れる者
善法院の日々
自然に還る
九十年の歳月
あとがき
解説 末國善己
ISBN: 9784062933520ASIN: 4062933527
映画・ドラマ版との違い・考察
五木寛之が描く親鸞は、決して雲の上の聖人ではなく、泥にまみれ苦悩し続ける一人の人間です。本作の白眉は、息子・善鸞との父子相剋を通して描かれる、愛憎という名の「業」の肯定にあります。九十年の旅路の果て、あらゆる因縁を越えて「自然」へと還るその姿は、混迷を極める現代を生きる私たちの魂に、烈しいまでの生の渇望を呼び覚まします。 映像化されたことで中世の混沌とした熱気や群像劇としての迫力は壮麗に補完されましたが、親鸞の「沈黙の内省」は、五木氏の端正な言葉を追う読書体験でこそ真髄を味わえます。映像の動的な力強さと、活字が紡ぎ出す深い精神性のシナジー。両メディアを往還することで、物語は次元を超えたリアリティを帯び、読者を圧倒的な感動へと誘うのです。


















