あらすじ
未知の時代を目前に、嵐の前の静けさが日本を覆っていた1960年。伊吹信介(いぶきしんすけ)はタバ風の吹き荒む江差(えさし)にいた。そこで会ったオーストラリアの友人・ジョンの「あなたは一度日本を出てみるべきです」という言葉に惑(まど)う信介。特攻船やソ連との関係に揺れる函館を訪れたとき、彼の背中を押す風が吹く。世代を超えて読みつがれる不滅の大河ロマン。(講談社文庫)
あの衝撃的な主人公伊吹信介はどこにいる。伊吹信介は、北へ旅立つ。激風の江差の町に彼を追う黒い影。そして混血の美少女、立原襟子。新たに会う友情と青春の憂愁に彩られた冬の日々。大河小説の決定版!
ISBN: 9784062769099ASIN: 4062769093
作品考察・見どころ
五木寛之が描く伊吹信介の軌跡は、常に自己の根源を問う「漂泊の哲学」に貫かれています。本作の舞台である厳冬の北の地は、単なる背景ではありません。それは信介の凍てつく孤独と、新たな世界への渇望を炙り出す鏡の役割を果たしています。そこには、戦後日本が抱える閉塞感を突き破ろうとする、青臭くも気高い「反逆の精神」が力強く脈打っています。 ジョンや襟子といった異質な他者との邂逅は、信介の魂に激しい揺さぶりをかけます。自国を外からの視座で捉え直し、既存の価値観から脱却しようとする彼の葛藤は、現代を生きる我々の心にも鋭く響くはずです。未知の海原へ踏み出そうとする瞬間の、震えるような高揚感こそが、この大河ロマンが放つ不滅の輝きなのです。


















