九十三歳に達した五木寛之氏が、生涯をかけて紡いだ人間学の結晶がここにあります。かつて絶望を肯定し多くの魂を救った著者が、本作で提示するのは単なる諦念ではありません。濁流を飲み込み悠然と流れる大河のような、圧倒的な生の肯定です。老いや孤独にさえ光を当てる透徹した眼差しは、読者の心に深く浸透し、静かな勇気を与えてくれます。
負の感情を力へ変える五木思想は、本作で更なる円熟味を帯びています。一滴の雫が大海へ還る刹那を、これほど慈しみ深く描いた言葉が他にあるでしょうか。人生の黄昏を見つめる人々へ贈られた、魂を震わせる至高の福音であり、現代を生き抜くための究極の指針となる一冊です。