あらすじ
本書は、「関係のよくない親を、どう見送るか」がテーマの本です。
40代から60代にかけて直面する、親の老いと死。
親との関係がよくても不安になる人も多いのに、
関係のよくない親なら、なおさら不安や怖い気持ちになるのも当然です。
本書は、このような方々に向けて書かれました。
・親との関係がずっと悪く、できることなら関わりたくない
・親が苦手で、なんとなく実家とは距離をとっている
・「毒親」とまでは言えないが、付き合いづらい親だ
・親がしょっちゅう人間関係やお金のトラブルを起こす
・親の価値観を、今でも押し付けてきて嫌な思いをする
著者は、京都で訪問診療・緩和ケアに携わる医師であり、
真宗大谷派で得度した僧侶でもある岡山容子氏。
数多くの看取りに立ち会ってきた専門家でありながら、
自身もかつて「毒親」だった実の母を、
長年の葛藤の末に看取った経験をもっています。
(本文より一部抜粋)
親との関係が良好でなかった人ほど
看取りの場面では心が揺れる傾向があるかというと、
そうでもないように思います。
関係がよくなかったからこそ離れたいと思う人もいますし、
ひどい言葉を浴びせられてきたからこそ、
なんとか褒められたいと自分を消耗させてしまう人もいます。
疎遠であった場合は、そのまま疎遠のまま終わることもあるかと思います。
一般論としての「美談」や「私の看取りはこんなによかった」
という情報に引きずられてしまうと、
「自分は冷たいのでは?」と責めてしまう人もいるかもしれません。
そして「こうあるべき」という社会的イメージとのギャップに苦しむ人もいるかもしれません。
しかし人生は人それぞれです。
だから最期の時も人それぞれです。
人の死に方や関係の終わり方は一様ではありません。
詳しくは本文でお伝えしますが、私は、基本的には
「お別れはしたほうがいい」
というスタンスです。
それは子どもの立場であるあなたの気持ちを考えてのことです。
親が死んでしまったあとも、あなたの人生は続きます。
そのときに、苦しんでしまったり、大きな後悔が襲ったりすることが少ないよう、できたらお別れはしたほうがいいとおすすめしています。
ただ、そのためにあなたが親との関係で最後の最後までつらい思いをするのならば
……捨ててもいい、とも思っています。
親子の形はそれぞれ、見送り方もそれぞれです。
正解などはないのです。
そして「あなたはどうするのか」ということです。
それを、みなさんそれぞれに考えるヒントにしてもらうために、本書を書きました。
作品考察・見どころ
本書は単なる看取りの指南書ではありません。緩和ケア医であり僧侶でもある著者が、自らの葛藤をさらけ出した魂の救済の書です。専門知と実体験が交錯する言葉には、巷の美談を鮮やかに解体する圧倒的な説得力が宿っています。親子の葛藤という出口のない暗闇を歩む読者にとって、これほど生々しく響く言葉は他にないでしょう。 最大の見どころは、孝行という呪縛を断ち、見送る側のその後の人生を優先する慈悲深さにあります。お別れを推奨しつつも、究極的には捨ててもいいと言い切る著者の覚悟。それは親子の数だけ正解があることを肯定し、読者を罪悪感から解放する熱い祈りそのものです。愛せない親の最期という深淵に挑む、必読の一冊です。