鳥羽亮が描く剣戟の極致がここにある。本作の真髄は、七万石という巨大な権力組織に対し、己の技量のみを頼りに挑む十三人の「個」の凄絶な生き様だ。単なる集団抗争劇に留まらず、剥き出しの殺気が紙面から立ち上るような硬派な文体は、読者を一瞬にして血煙舞う戦場へと引き摺り込む。
それぞれの戦鬼たちが背負う業と、極限状態で火花を散らす剣技の描写は圧巻の一言。組織の論理に抗い、武士としての矜持を貫こうとする彼らの魂の咆哮が、静謐な文学的抒情を湛えながら胸を打つ。歴史の闇に消えゆく者たちの美学を、これほどまでに熱く、克明に刻んだ傑作は他にない。