青山美智子氏が紡ぐ物語は、私たちの魂の欠落を鮮やかに、そして優しく射抜きます。象徴的な遊具・カバヒコは、祈りの対象を超えた己の内面を映し出す鏡です。治したい部位を触る儀式を通じ、登場人物たちが孤独や焦燥を肯定していく姿は、読む者の心に眠る傷跡さえも温かく抱きしめてくれます。
マンションで交差する人生が、カバヒコを介して再起していく展開は圧巻です。再生とは元に戻ることではなく、痛みを抱えたまま新しく歩き出すこと。そんな真実を突きつける本作は、現代を生きるすべての人に捧げられた福音であり、至高の癒やしに満ちた極上の文学体験と言えるでしょう。