あらすじ
ISBN: 9784101355535ASIN: 4101355533
添木田蓮と楓は事故で母を失い、継父と三人で暮らしている。溝田辰也と圭介の兄弟は、母に続いて父を亡くし、継母とささやかな生活を送る。蓮は継父の殺害計画を立てた。あの男は、妹を酷い目に合わせたから。--そして、死は訪れた。降り続く雨が、四人の運命を浸してゆく。彼らのもとに暖かな光が射す日は到来するのか? あなたの胸に永劫に刻まれるミステリ。大藪春彦賞受賞作。
道尾秀介が描くのは、単なる謎解きではなく、降りしきる雨のなかに溶け出す祈りと絶望のグラデーションです。本作の真髄は、血の繋がらない家族という危うい関係性のなかで、幼き魂たちが選ばざるを得なかった哀切な決断にあります。全編を貫く重厚な湿り気は、読者の心をも浸食し、逃れられない運命の重みを肌で感じさせるでしょう。 この物語が放つ文学的な輝きは、罪を犯してでも守りたかった純粋さというパラドックスに宿っています。凄惨な状況下で微かに灯る、兄弟・兄妹の絆の温かさが、残酷な結末さえも一種の救済へと昇華させています。ミステリの枠を超え、人間の業と愛の深淵を抉り出す圧倒的な筆致は、読了後、あなたの心に消えない残響を刻みつけるはずです。