道尾秀介が得意とする「技巧的な企み」を超え、本作は喪失と再生を真っ向から描いた人間ドラマとして類まれな輝きを放っています。家具職人としての誇りと過去の罪悪感に苛まれる主人公の心理は、木材を削り出すかのような繊細さと無骨さを併せ持ち、読む者の魂を揺さぶります。
得体の知れない影に怯えるミステリの緊張感と、社会の片隅で身を寄せ合う人々が灯す微かな希望。その鮮やかなコントラストが、絶望の淵に立ち止まる者への力強いエールへと昇華されています。読み終えた瞬間、目の前の景色が鮮やかに塗り替えられるような、圧倒的なカタルシスを約束する名篇です。