あらすじ
製鏡所の娘が願う亡き人との再会。少年が抱える切ない空想。姉弟の哀しみを知る月の兎。曼珠沙華が語る夫の過去。少女が見る奇妙なサソリの夢。老夫婦に届いた絵葉書の謎。ほんの小さな行為で、世界は変わってしまった。それでも―。六つの世界が呼応し合い、眩しく美しい光を放つ。まだ誰も見たことのない群像劇。
ISBN: 9784087715293ASIN: 4087715299
作品考察・見どころ
道尾秀介が本作で描いたのは、喪失と再生が鮮やかに織りなす極上の連作群像劇です。鏡や月、花といった象徴的なモチーフを媒介に、現実と幻想が溶け合う瞬間の美しさを、これほど残酷かつ温かく切り取った筆致には脱帽せざるを得ません。緻密なミステリの技巧を土台にしつつ、言葉にならない心の機微を優しく掬い上げるその手腕は、まさに文学の真骨頂と言えるでしょう。 六つの断片が静かに共鳴し、最後には眩い光の連鎖を形作る構成は圧巻です。登場人物たちが抱える深い後悔や孤独が、ふとした瞬間に他者の希望へと転じる「世界の揺らぎ」こそが、本書の持つ本質的な輝きです。読み終えた後、あなたの目に映る日常の景色すらも一変させてしまうような、魂を震わせる魔法がここに宿っています。