あらすじ
ホラー作家の道尾は、子供が次々消える“神隠し”の村で、霊のものとしか思えぬ声を聞く。逃げ帰り向かったのは「霊現象探求所」。話を聞いた所長の真備庄介は、「背の眼」と書かれたファイルを差し出す。そこには、人の眼が写り込んだ4枚の心霊写真と、その送り主からの手紙が。写真の全てが村の近辺で撮影されており、しかも被写体全員が撮影後に自殺していた......。この村は一体!?道尾秀介デビュー作。
ISBN: 9784344435094ASIN: 4344435095
作品考察・見どころ
道尾秀介の原点にして、ミステリとホラーが美しく交錯する本作の真髄は、単なる恐怖ではなく、人間の内側に潜む「業」の深さを描き切った点にあります。神隠しの伝承が残る村の静謐な狂気と、背中に眼が浮かぶという異形が、論理の刃によって解き明かされていく過程は圧巻です。論理と幻想がせめぎ合う境界線上に立ち、読者を底知れぬ深淵へと誘う筆致は、まさに驚異的と言えるでしょう。 著者が構築する、冷ややかで叙情的な世界観は、五感を刺激する緻密な描写に裏打ちされています。死者の声と生者の哀しみが溶け合う物語の先で、読者は「視ること」の意味を厳しく問い直されるはずです。知的好奇心を揺さぶるロジックの積み重ねと、魂を凍らせるような根源的な恐怖。その二つが奇跡的な均衡で同居する本作は、現代ミステリの歴史に深く刻まれるべき不朽の傑作です。