あらすじ
刑務所で作られた椅子に奇妙な文章が彫られていた。家族を惨殺した猟奇殺人犯が残した不可解な単語は哀しい事件の真相を示しており……。(「ケモノ」)同級生のひどい攻撃に怯えて毎日を送る僕は、ある女の人と出会う。彼女が持つ、何でも中に入れられる不思議なキャンバス。僕はその中に恐怖心を取って欲しいと頼むが……。(「悪意の顔」)心の「鬼」に捕らわれた男女が迎える予想外の終局とは。驚愕必至の衝撃作!
ISBN: 9784041000120ASIN: 4041000122
作品考察・見どころ
本作は、人間の深淵に潜む業や狂気を「鬼」というメタファーで鮮烈に描いた連作短篇集です。ミステリの技巧を超え、道尾秀介が振るう卓越した筆致は、読者の内面にある名状しがたい不安を容赦なく抉り出します。描かれるのは異形ではなく、愛や執着から生じる日常の歪みであり、その文学的な気品が恐怖を一種の美しさへと昇華させています。 一篇ごとに迫りくるのは、他者ではなく自らの内側から響く足音です。ページをめくるたび、確信していた現実が音を立てて崩れ去る感覚は、まさに活字でしか味わえない極限の心理体験と言えるでしょう。論理を超えた先にある、震えるような詩情と残酷な余韻こそが本作の真骨頂です。暗闇の果てに人間の本質を捉えたこの傑作を、ぜひその身で体感してください。