月と蟹
あらすじ
ISBN: 9784167838669ASIN: 4167838664
海辺の町、小学生の慎一と春也はヤドカリを神様に見立てた願い事遊びを考え出す。無邪気な儀式ごっこはいつしか切実な祈りに変わり、母のない少女・鳴海を加えた三人の関係も揺らいでゆく。「大人になるのって、ほんと難しいよね」―誰もが通る“子供時代の終わり”が鮮やかに胸に蘇る長篇。直木賞受賞作。
道尾秀介氏の真骨頂である緻密な心理描写が、少年たちの脆く危うい精神世界を見事に描き出しています。海辺の町という閉塞感漂う舞台で、孤独な子供たちが縋った「儀式」は、純粋さゆえの残酷さを孕み、読者の胸を強く締め付けます。単なる成長物語に留まらず、大人の階段を上る瞬間に失われる透明な何かを、圧倒的な筆致で捉えた文学的傑作です。 本作の本質は、言葉にできない孤独の救済を求めて「神」を捏造してしまう少年の痛切な叫びにあります。道尾氏の持ち味である情景が匂い立つような抒情性が、読み終えた後、冷たい月光を浴びたような深く静かな余韻をもたらします。残酷なまでに美しい、少年の魂の震えをぜひその手で受け止めてください。