あらすじ
一年前に離婚した大槇(おおまき)辰男は、息子・俊也(しゅんや)との面会の帰り、かつて故郷のO村に住んでいた曾木美禰子(そぎみねこ)を駅で見かける。32年前、父に殺されたはずの女が、なぜーー。だが次の瞬間、彼女は電車に撥ねられ、命を落とす。辰男は俊也を連れてO村を訪れることを決意。しかしその夜、最初の悪夢が……。薬物、写真、地下水路。昏い迷宮を彷徨(さまよ)い辿り着く、驚愕のラスト。道尾史上最驚の長編ミステリー!
ISBN: 9784101355566ASIN: 4101355568
作品考察・見どころ
道尾秀介の真骨頂は、五感に訴える精緻な描写と、読者の認識を鮮やかに裏切る叙述の妙にあります。本作では封印されたはずの過去が亡霊のように立ち現れ、血の繋がりに縛られた親子を昏い迷宮へと誘います。地下水路に象徴される閉塞的な空間で真実が変質していく過程は圧巻。読者は自らの記憶さえ信じられなくなるような、深淵な心理的恐怖を味わうことになります。 タイトルの「貘」が象徴するのは、悪夢を喰らう救済か、それとも現実を蝕む歪みか。本作は単なる謎解きを超え、罪と血脈という名の逃れられぬ「檻」を巡る、極上の人間ドラマを描き出しています。結末で突きつけられる衝撃は、まさに道尾ミステリーの到達点。一文字ごとに足元が崩れていくような、魂を震わせる驚愕をぜひ全身で体験してください。