道尾秀介が描くのは、静謐な恐怖と緻密な論理性が共鳴する、五感を震わせるミステリです。仏像が血を流すという幻想的な怪異を、単なるホラーに留めず人間の深い業へと結びつける筆致は円熟の極み。神聖な工房に漂う禍々しさが、読者を逃れられない迷宮へと誘います。
物語の深淵に横たわるのは、二十年という歳月が醸成した、残酷なまでに純粋な愛執です。真備、道尾、凛の三人が織りなす関係性が、重苦しい真実に鮮やかな色彩を与えています。恐怖の果てに露わになる人間の真実の姿を見届けたとき、あなたの心には冷たくも激しい衝撃が刻まれるはずです。