あらすじ
読む順番で、世界が変わる。
全6章、あなた自身がつくる720通りの物語。
「本書は6つの章で構成されていますが、読む順番は自由です。はじめに、それぞれの章の冒頭部分だけが書かれています。読みたいと思う章を選び、そのページに移動してください。物語のかたちは、6×5×4×3×2×1=720通り。読者の皆様に、自分だけの物語を体験していただければ幸いです。/著者より」未知の読書体験を約束する、前代未聞の一冊! この物語をつくるのは、あなたです。
すべての始まりは何だったのか。
結末はいったいどこにあるのか。
「魔法の鼻を持つ犬」とともに教え子の秘密を探る理科教師。
「死んでくれない?」鳥がしゃべった言葉の謎を解く高校生。
定年を迎えた英語教師だけが知る、少女を殺害した真犯人。
殺した恋人の遺体を消し去ってくれた、正体不明の侵入者。
ターミナルケアを通じて、生まれて初めて奇跡を見た看護師。
殺人事件の真実を掴むべく、ペット探偵を尾行する女性刑事。
道尾秀介が「一冊の本」の概念を変える。
【著者プロフィール】
道尾秀介(みちお・しゅうすけ)
1975年東京都出身。2004年『背の眼』でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞しデビュー。07年『シャドウ』で本格ミステリ大賞、09年『カラスの親指』で日本推理作家協会賞、10年『龍神の雨』で大藪春彦賞、『光媒の花』で山本周五郎賞、11年『月と蟹』で直木賞を受賞。その他の著書に『向日葵の咲かない夏』『鏡の花』『フォトミステリー』『きこえる』「いけない」シリーズなど多数。
作品考察・見どころ
道尾秀介氏の『N』は、一冊の本という器を能動的な実験装置へと変貌させた野心作です。読む順番を読者に委ねる仕掛けにより、ある章の真相が別の順序では伏線へと変容します。因果の意味さえも揺らぐ過程は、我々の生きる世界の不確かさと、視点次第で真実が色を変えるという残酷なまでの美しさを浮き彫りにしています。 孤独な魂が交錯する各章は、自ら物語を編むことで「自分だけの体験」へと昇華されます。バラバラの破片があなたの選択で重なり、驚愕の景色を描き出す瞬間。この比類なき体験は、物語の結末とは作家が与えるものではなく、受け取る者の心が決めるものであるという文芸の真理を、鮮烈に突きつけてくるはずです。